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情報化戦略の位置づけ

キーワード

経営戦略、情報化戦略、情報化計画、個別システム


情報化戦略の位置づけ

情報化戦略の位置づけは、次の3つの中間にあるといえます。

  経営戦略
   ├ マーケティング戦略
   ├ 財務戦略
   ├ 新製品戦略
   │  :
   └ 情報化戦略
      ├ 業務手順の見直し
      ├ 情報技術の調査,分析
      │  :
      └ 全体システム化計画
         └ 個別システム計画
            ├ 販売システム
            ├ 生産システム
            ├ 人事システム
            ├ 会計システム
            │  :

情報化戦略策定の前提

経営戦略の確認
情報化戦略は経営戦略のサブ戦略の一つですから、情報化戦略だけを追求したのでは部分最適化になってしまいます。それで、情報化戦略は経営戦略に従って策定されなければなりません。
]  ところが、ITの活用は経営に大きな影響を与えるので、IT活用動向を常にウオッチして、経営戦略に反映させることも重要です。
業務環境の調査,分析:情報化戦略と他の戦略との関係
経営戦略には、マーケティング戦略や財務戦略など多くのサブ戦略があります。経営戦略を直接的に実現するのはこれらのサブ戦略ですが、それを効果的に行うには、ITの活用が不可欠です。すなわち、情報化戦略は他の戦略を実現するためのインフラとして大きな影響を与えます。
 情報システムは業務システムの一部です。業務としての成果をあげるためには、業務の仕方の見直しや社外関係者との折衝など、情報システム開発以外の活動が必要になります。各戦略の策定や実施には、それを考慮することが必要です。
 しかも、個々のサブ戦略が互いに連携することが重要ですが、それには情報の伝達・共有が求められます。情報化戦略は他の戦略間の橋渡しとしての位置づけもあります。
情報技術の調査,分析
情報技術は急速に発展しています。情報システム戦略の検討では、その成果をいかに享受するかの観点が重要です。
特に、クラウドコンピューティング、Webシステム、SNS、RPA、AIなどIT活用技術の普及は、単に情報システムだけでなく、業務そのものを変化させています。
 情報技術の動向を常に監視し、自社への適用の是非を分析することが必要です。

情報化戦略策定手順

基本戦略の策定:現状分析と将来計画
業務および情報システムについて、現状(as-is)把握と将来のあるべき姿(to-be)の作成をして、そのギャップを認識します。そのギャップを低減するために、情報システムはいかにあるべきかを検討することにより、基本戦略を策定します。それにはEAにより、政策・業務体系、データ体系、適用処理体系、技術体系の観点から分析し、関係者が共通に理解できる可視化にために図表化します。
業務の新イメージ作成
as-isとto-beのギャップ分析から、検討している次期システムのイメージの作成を作成します。このとき重要なのは、個々の事項を個別に検討するのではなく、全体最適化の観点からまとめることです。個々の業務からは多様な要件が提出されるでしょうが、それらのすべてを満足しようとすれば部分最適化になってしまいます。組織全体として業務とシステムが進むべき方向を示す方針であることを理解されるために強力なITガバナンスが求まられます。
情報化資源の検討
ここでの情報化資源とは、費用、人材、技術、協力他社など多様な要素があります。これに関しても現在の能力と次期システム構築・運用に必要な能力を算出して、獲得手段を検討します。そのハードルが高いときは、戦略の一部縮小を検討します。この際も全体最適化の観点が重要です。
対象の選定
以上から戦略案が作成されるのでですが、重要なのは代替案の作成です。情報化資源の制約により、すべてを満足する戦略案ができることは稀で、なんらかの未実現要素を含んでいるので、何を重視するかにより複数の代替案がるのが当然です。それらについて、経営や業務への影響、実現性、リスクなどの観点から比較できる資料を作成します。
戦略案の提出と承認
このようにして作成した戦略案は、経営者や関係者に提示され、検討され、最終的には経営者の承認を得て正規の情報化戦略になります。

情報化計画との関係

情報化計画とは情報化戦略を実現するための具体化をしたものです。費用、時期、体制などを決定します。ここでは、情報化計画策定での観点を列挙します。

情報システムの類型と投資
情報システムには二つの類型があり、投資の考え方も異なります。
  • 個別業務システム
    Web販売システムや生産システムなど、特定の業務を遂行するシステムです。直接的な利益(コスト削減)を得るのはこの分野です。システム化による人員削減や時間短縮など効果の把握も比較的容易です。
  • インフラ投資
    モバイル端末の普及やLANの敷設、汎用パッケージ、セキュリティ対策などへの投資です。これ自体は直接の利益はありませんが、これらが整備されていれば個別業務システムの構築が容易(費用・時間など)にできます。投資判断には戦略的観点が求められます。
情報システムの調達手段
次のような手段があり、どれを採用するかで、情報化資源(ヒト・カネ)や納期が異なりますし、業務プロセスにまで影響することもあります。
  自社独自の仕様
    自社開発(ベンダの協力は得るが)
    全面的外注
  システム仕様に業務を合わせる
    ERPパッケージ
    クラウドコンピューティング

個別業務システムとの関係
販売システムや会計システムなど、すべての個別システムを一挙にシステム化するのは、理想的ではありますが、費用面でも人材面でも困難です。それで、個々の業務別に情報システムを開発するのが通常です。
 ところが、個々のシステムを開発するのに、全体的な構想すなわち情報化戦略がないと、いわゆる「縦割りシステム」になり、部分最適化になってしまいます。
 例えば、販売システムの売上データは、会計システムでの売掛金データになりますが、二つのシステムで得意先コードや商品コードの体系が異なっていたり、売上の概念に違いがあれば、円滑にデータの受け渡しができません。極端には、会計システムに人手で再入力するような場合も起こります。
 情報化戦略と個々の情報システムとの関係も、経営戦略と情報化戦略の関係と同じで、個々の情報システムは、情報化戦略に従って構築され運用される必要があります。