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業務を依頼するコンピュータをクライアント,その依頼により処理を行うコンピュータをサーバといいます。その構成は,メインフレーム時代,LAN時代,Web時代の技術変化と利用や運用管理からの要請により,変化してきました。特に最近では,リッチクライアント(Rich Client)が注目されています。この構成変化を歴史的に考察することにより,利用面と運用面での考慮すべき事項を理解します。
TSS,CSS,3層構造,Webクライアント,MVC構造,HTMLクライアント,リッチクライアント
1970年代に,1台のメインフレームに多数の端末(当時は「クライアント」といわず「端末(ターミナル)」といっていました)を通信回線で接続して,TSS(Time Sharing System:時分割方式)により共同利用する方式が普及しました。これにより,情報システム部門以外の人が直接にコンピュータを操作するEUC(End-user Computing)が普及しました。
当初の端末(クライアント)は,タイプライタに通信回線をつけたようなものでしたが,パソコンの普及とともに,パソコンをTSSの端末として利用するようになりました。しかし,TSS端末としての機能とパソコンとしての機能は完全に分離されており,端末は,単にメインフレームの入出力装置としての機能でした。しかも,メインフレームの時代ではOSも通信プロトコルもメーカー独自のものでしたので,富士通のメインフレームに接続するには富士通のパソコンに限定されるというようなメインフレームに付属したものでした。
すべての処理はメインフレームで行っていました(注1)。それで,個別のアプリケーションごとに入出力画面をプログラムで作成する必要がありました。その画面はCUI(Character-based User Interface)で,文字と枠だけの非常にシンプルなものでしたし,入力個所の位置決めはマウスではなくカーソルで行う環境でした。
しかし,個別のアプリケーションごとに個別のファンクションキーを割り付けるなど,それなりに操作しやすい工夫はできました(注2)。また,あるアプリケーションを利用している間は,一つのセッションとして管理できたので,画面の切り替えやデータベースとのデータ交換などは,案外容易にできたのです。
注1:EUCが盛んな先進企業では,メインフレームの負荷が大きくなり,定例的な業務を夜間にまわして,日中をEUCを主体に行うようにしました。さらには,EUCのためにメインフレームを増強するようなことも発生しました。
注2:実際には,個々のアプリケーションでファンクションキーの機能が異なると利用者が戸惑うので,標準化しようという対策がとられていましたが。
1980年代末から1990年代にかけて,ダウンサイジングが進み,多数のパソコンをLANで接続してクライアントからの処理依頼により,サーバが処理を行う構成をCSS(Client-Server System)といいます。
CSSの普及によりメインフレームからサーバに変りました。パソコンのオープン化も進み,どのメーカーのパソコンでもクライアントにすることができるようになりました。しかし,この状況では通信プロトコルはいくつかのネットワークOSが存在しており,そのためのソフトをクライアントに持つ必要がありましたし,アプリケーションごとにクライアントに個別のソフトをを持つ必要がありました。
CSS環境になると,パソコンと同様な画像やアイコンなどのGUI(Graphic User Interface)が用いられるようになり,見やすく操作しやすい画面設計ができるようになりました。しかし,この環境でも個々のアプリケーションによりインタフェースが異なり,パソコン側にそれぞれのインターフェースのためのソフトウェアをインストール必要がありました。あるいは,データをサーバに置いておき,パソコン側のアプリケーションで処理する形式もありました。このような構成を2層構造といいます。
この間にパソコンのワープロソフトや表計算ソフトなどのソフトウェアが充実し,その利用も広まりました。それらの機能が大きくなるにつれ,巨大なディスクが必要になり,性能を高めるために,大容量のメモリや高速なCPUが必要になりました。パソコンはFat PC(ファットPC,太ったパソコン)になったのです。
そうなると多くの問題が顕著になりました。
CSSでの適用業務が増大してくると,上記のような問題が深刻になるだけでなく,サーバの性能や容量が不足して,常にサーバを増強する状態になります。ところが,アプリケーションやデータを保管しているサーバが変るたびに,クライアントの設定を変更するのでは,ますます管理が複雑になります。
そこで,考えられたのが3層構造です。3層構造とは,機能をプレゼンテーション,ファンクション,データの3層に区分して,クライアントから直接アクセスするサーバに,どのアプリケーションやデータがどこにあるかを示す機能(ブローカー機能)を持たせることにより,アプリケーションやデータの配置変更管理を容易にしようというものです。
3層構造では,クライアントはプレゼンテーション機能(入力や出力など人間と直接に関係する機能)だけを持てばよいことになります。これまで必要としていた多様なソフトは不要になりますので,ハードやソフトの費用が下がります。これをThin PC(シンPC,やせたパソコン)といいます。
この環境では,バージョンアップは比較的少数のサーバだけを行えばよいし,この面に限ればクライアントパソコンの管理も不要になります。また,その後のインターネットの普及によるウイルスや不正アクセスの脅威や,個人情報や機密情報の漏洩の危険を防ぐために,クライアントにディスクなどの記憶装置を持たせないことが注目されるようになりました。
Thin PCは,1995年にオラクル社のラリー・エリソン会長によって提唱されたネットワークPC構想がありました。パソコンにJavaを搭載して,アプリケーションは,ユーザーが使用するときにネットワークからダウンロードして使用する方式にすれば,当時は2000ドルしていたパソコンを500ドルにできるとされ,500ドルパソコンといわれました。ところが,その後通常のパソコンの価格性能比が急激に向上したこと,Javaの速度を上げられなかったこと,利用者が機能を手元に置きたいと思ったことなどにより,現実には消え去ってしまいました。
現在,500ドルパソコンとえば,アップルが2005年1月に発表した「Mac mini」(価格499ドル)をいうようです。これは,一応のソフトを揃えたfat PCです。また,日立は2005年2月に,ディスクなしのノートパソコン(セキュアPC)を発表しましたが,これは紛失・盗難での情報漏洩防止を目的としたものです。
1990年代中頃になると,Webブラウザが利用できるようになり,インターネットが急速に普及しました。そのインターネット技術を社内ネットワークに適用した環境をイントラネットといいます。その特徴は,通信プロトコルをTCP/IPにすること,プレゼンテーションソフトをWebブラウザにすることです。TCP/IPを採用すれば,イントラネットにもインターネットにも同じに使えますし,これはパソコンに標準装備されています。Webブラウザも同様です。現在では,大部分の市販ソフトがこの環境で稼動するようになっています。
クライアントにWebブラウザだけを置いたものをWebクライアントといいますが,後述のリッチクライアントと区別してHTMLクライアントというようになりました。
HTMLクライアントによる3層構造は,上述以外に次の利点があります。
HTMLクライアントは,もともとWebページ表示用に作られたブラウザを、業務用のクライアントに応用するのですから,実際にはいろいろな限界があります。
Webクライアントの環境では,サーバをMVC構成にするのが適しています。MVCとは,Model(処理),View(表示),Controller(制御,入力)のことです。
リッチクライアント(Rich Client)には,未だ統一された定義はないのですが,(アクシスソフト)とか,(野村総研)などといわれています。
単純にいえば,ファットクライアントとHTMLクライアントとの「いいとこどり」をしたような形式です。
リッチクライアントでは,パソコンで処理できることは,サーバに接続しなくてもクライアント側で処理できるようにします。それにより,パソコンで作るのと同様なきめの細かい画面にしたり,優れた操作性を持たせることができます。また,ネットワーク接続は必要なときだけ行い,常時はパソコン内部での処理になるので,処理速度もWebクライアントより高速になります。
OSやWebブラウザの違いの問題は,JavaやJ2EEなどOSと独立したソフトウェアを利用することにより,解決します。また,それを支援する開発環境を構築するシステムが提供されるようになりました。
アプリケーション変更時のクライアントへの配布が問題になりますが,Webクライアントと同じように,クライアントがWWWサーバにアクセスしたときに,変更するべき新アプリケーションをダウンロードすることにより,配布問題を解決します。特にこれらの処理を利用者の手を煩わせないように自動化する「ノータッチ・デプロイメント」機能が発展してきました。
先に,Fat PC/Thin PCがありましたが,Webの観点からは,Thin PCとはHTMLベースのクライアント,Fat PCリッチクライアントを指すようになってきました。