小売業、粗利益、商品回転率、交差比率,GMROI
小売業での利益向上には、「儲かる商品」を選択することが必要です。儲かるかどうかは、次のような尺度で評価します (数値例)。
商品A 商品B
売価[円/個] 100 100
仕入価格[円/個] 80 80
毎日の平均販売個数[個/日] 10 10
平均在庫量[日分] 5 10
定義式:粗利益=売価-仕入価格,粗利益率=粗利益/売価
数値例:商品Aの仕入価格を80[円/個],売価を100[円/個]とすると,
粗利益=100[円/個]-80[円/個]=20[円/個]
粗利益率=20[円/個]/100[円/個]=0.2=20%
短期的には店舗費用などの固定的な費用はコントロールできませんから,短期の利益確保の観点では粗利益を大きくすることが必要です。しかし,競争の激化,経済の低迷,価格破壊などの影響により粗利益率は非常に低い状況になっています。
定義式:商品回転率(売価評価)=売上高/平均在庫投資額(売価評価)・・・(ア)
=1年間の売上個数/平均保有在庫日数分の個数・・・(イ)
(アは金額で計算するとき,イは数量で計算するときに用いる。結果は同じになる)
数値例:商品A
売価100[円/個]
毎日の平均販売個数10[個/日]
平均在庫量5日分=50[個]のとき,
(ア)による計算
売上高=100[円/個]×10[個/日]×365[日/年]=365,000[円/年]
平均在庫投資額=100[円/個]×10[個/日]×5[日]=5,000[円]
商品回転率=365,000[円/年]/5,000[円]=73[1/年]→73回
(イ)による計算(分子と分母から共通の100を除いたもの)
1年間の売上個数=10[個/日]×365[日/年]=3,650[個/年]
平均保有在庫日数分の個数=10[個/日]×5[日]=50[個]
商品回転率=3,650[個/年]/50[個]=73[1/年]→73回
(練習)商品Bでは,売価100[円/個],毎日の平均販売個数10[個/日]であるが,
平均在庫量10日分=50[個]である。商品回転率は?
答:36.5回
注:在庫を仕入価格で評価する方法もある。そのときはイは利用できない。
商品Aの商品回転率(原価評価)
=売上高(365,000[円/年])/(80[円/個]×10[個/日]×5[日])
=91[1/年]→91回
同様に商品Aの商品回転率(原価評価)=45.5回
定義式:交差比率=粗利益率×商品回転率(売価評価)
数値例:各値は上記と同じとする
商品Aの交差比率=0.2×73=14.6
商品Bの交差比率=0.2×36.5=7.3
交差比率は,売場面積あたりの利益評価の指標だともいえます。商品Aも商品Bも1個あたりの利益や1年間の売上高は同じですが,商品Aにくらべて商品Bは2倍の在庫を持っています。在庫量を売場の面積であると考えれば,面積あたりの利益は商品Aは商品Bの2倍になります。
定義式:GMROI=粗利益率×商品回転率(原価評価)
数値例:各値は上記と同じとする
商品AのGMROI
=粗利益率(0.2)×商品回転率(原価評価)(91)=18.2
商品BのGMROI=0.2×45.5=9.1
GMROIの定義式を変形すると「(売上高-仕入高)/平均在庫の仕入金額」となり, 商品の1年間の粗利益を平均在庫の仕入金額で割ったものになります。これは商品への投資効率を示すものであり,GMROIが大きい商品が利益が大きいといえます。それでGMROIを商品在庫投資総利益率ということもあります。
利益向上のためには,交差比率やGMROIを上げることが必要です。それには、売価を上げることや仕入れ価格を下げること、売上個数を伸ばすことが考えられますが、それらには限界があります。すなわち、平均在庫量を減らすことが重要な対策になるのです。