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見込生産と受注生産

キーワード

見込生産、受注生産、BTO、SCM、ロット生産、FMS


見込生産と受注生産

製造業を生産方式から区分すると大きく見込生産受注生産になります。
 見込生産とは,日用品や食品のように,自社の仕様により製品を開発して生産し,在庫しておき、注文がくると製品を納入する形態です。
 受注生産とは,注文を受けてから生産にとりかかる形態です。まず販売活動により受注を得ます。発注側が指定した仕様の製品を生産します。受注生産には、注文住宅のように,その仕様が毎回異なるような形態を個別受注生産と、自動車部品のように,同じ仕様の製品受注がある程度繰り返される継続受注生産があります。

個別受注生産と見込生産での業務の順序の違いと,その特徴の違いを示します。

個別受注生産と見込生産での業務の順序の違い
項目 受注生産 見込生産
業務順序 受注→生産 生産→受注
製品仕様 客先仕様 自社仕様
生産形態 個別生産 連続生産
操業度 不安定 安定
生産調整 生産余裕 製品在庫

見込生産での受注から納品までの業務プロセスは、小売業や卸売業などと似ているので省略します。それに対して、受注生産の業務プロセスは複雑になります。
 個別受注生産での典型的な業務を図示すると下図のようになります。多くの部門が関係しており,それらの部門が円滑に活動するためには,情報の交換が必要であることがわかりましょう。

受注生産での業務フロー図

部品メーカーなどで多い形態に継続受注生産があります。発注側の仕様での生産,注文による生産では個別受注生産と同じですが,同一の仕様による部品を毎月継続的に受注します。完全に受注してから生産に入ることができればよいのですが,納期を非常に短くすることを要求されるために,ある程度は見込生産しておく必要があります。また,受注のピークにあわせて生産設備を設置すると無駄が生じますので工程の負荷を平準化するためにも見込生産をすることが必要になります。このように,継続受注生産は個別受注生産と見込生産との中間的な形態であるともいえます。その業務の流れはさらに複雑になります (業務フロー図)

見込生産で重要な業務

見込生産と受注生産では、重視すべき情報システムが異なります。当然ながら、需要予測は受注生産でも重要ですし、原価計算は見込生産でも重要ですが、ここではあえて区分しています。

需要予測
注文に先行して製品を作るのですから ,過剰生産をすれば不良在庫を生じるし,過小生産をすれば品切れによる機会損失を生じてしまいます。それを防ぐために正確な需要予測と在庫管理が重要です。
コスト管理
一般的に見込生産による製品は大量生産製品であり,他社との競争が激しく利益率が低い。利益を確保するには,部品や機械操作などの生産における極度のコストダウンが必要になります。

受注生産で重要な業務

納期管理
受注してから納入するまでの期間を短縮することが必要です。設計・生産の生産性をあげるためには,CAD(Computer Aided Design)やCAM(Computer Aided Manufacturing)による設計業務支援や生産の自動化などが重要になります。また,現在どのような工程に入っており,いつ完成するかの予定を把握する進捗管理が必要です。
資材調達管理
部品や素材が受注ごとに異なるので,それらの所要量算出と調達,生産での進捗管理,外注管理などが重要になります。
柔軟な生産計画
個々の製品の生産順序が異なり機械の操作も異なりますから,機械は汎用機械であり作業員は多能工になります。多品種少量生産をするために柔軟な生産体制にすることをFMS(Flexible Manufacturing System)といいますが,それを効果的にスケジューリングする情報システムが重要になります。
原価計算
受注を得るには見積を提出しますが,適切な見積価格を算出するには,部品や加工費などの原価計算が必要です。また,計画と実績の比較をするためにも原価計算が重要になります。

BTO:見込生産から受注生産へ

顧客の多様なニーズに応えるためには、見込生産よりも受注生産のほうが適しています。例えばパソコンは、以前は見込生産で生産したものを電気店などで購入していました。メモリ容量やOSなどの仕様を変更したいときは、店員に依頼するか自分で行う必要がありました。ところが現在では、インターネットで仕様を決定して注文することができます。すなわち、見込生産から受注生産に移行する傾向が進んでいます。
 注文を受けてから生産する方式をBTO(Build to Order)といいます。「BTO=受注生産」ではありますが、上記のように見込生産から受注生産に移行することを指すことが多いようです。

 BTOの場合、顧客満足を得るには、受注から納品までの期間を短縮することが大切です。そのためには、部品メーカー、組立メーカー、流通業者などが情報を共有して連携する必要があります。それをSCM(Supply Chain Management)といいます。初期の代表的な例にパソコンメーカーのデルが成功したデルモデルがあります。

ロット生産:受注生産での生産効率向上

一般に、見込生産をとるのは、石油や日用品など、自社が設定した比較的少数の品種を大量に生産する少品種大量生産になります。それに対して、受注生産では、受注のたび仕様が異なるので品種が多くなり、同じ製品数は少ない多品種少量生産になります。

大量生産のほうが生産効率や生産コストの面で有利です。そのため、少量生産であっても、一定期間の受注の中には似たような製品や共通部品、あるいは似たような加工や作業があります。それをロット(ある一定の量)にまとめて生産することにより、生産効率や生産コストを上げることが考えられます。それをロット生産といいます。

ライン方式とFMS

大量生産で代表的な方式は自動車工業でよく見られるベルトコンベア方式とも呼ばれるライン方式です。以前は単一仕様でラインを編成する少品種大量生産だけに用いられていましたが、コンピュータ制御により、異なるタイヤや内装などの部品が1本のベルトコンベアで扱えるようになっています。
 また、多品種少量生産を効率化するため、多数の工作機械を集中的に数値制御して加工し、部品の自動搬送装置(トランスファーマシン)により移動することが行われいます。
 このように、自動化により柔軟な生産を行うシステムをFMS(Flexible Manufacturing System)といいます。


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