抜取検査、OC曲線、生産者危険、消費者危険
抜取検査とは、母集団(それをロットといいます)から少数の標本n個を抜き取って、不良品がいくつあるかを調べ、不良品の個数がr個以下ならば合格(ロットを受け入れる)、r+1個以上なら不合格(ロット全体を受け入れない)とする検査方式です。
ここで、p=r/n が設定したロットの不良率p0より小さければ合格、大きければ不合格とすればよいというのは軽率です。
そのようなを判定をするためには、左図の赤線のようになっている必要があります。しかし、それにはロット全体を調べる(全数検査を行う)必要があります。
n個の標本のうちにr個の不良品がある確率は、二項分布になるので、その確率P(r)は、
P(r)=nCrpr(1-p)n-r
になり、不良品がr個以下である累積確率P(≦r)は、
P(≦r)=∑P(r)=P(0)+P(1)+P(2)+・・・+P(r)
になります。
ここで、nとrを固定すれば、P(≦r)はpの関数になります。それで、P(≦r)の代わりにP(p)と表記することにします。すると、P(p)は右図の青線のようになります。これをOC曲線(Operating Characteristic Curve:検査特性曲線)といいます。
すなわち、抜取検査では、左図の赤線のようにはならず、右図の青線のようになるので、簡単には判定できないのです。
このOC曲線の意味を考えます。
p=0の付近でP(p)=1に近くなるということは、ロットの不良率が0に近いときは、ロットによる検査が合格する確率が大きくなることを示しています。そして、曲線が右下がりになっていることは、ロットの不良率が大きいと合格する確率が小さくなる(不合格になる確率が高くなる)ことを示しています。これは直感から理解できるでしょう。
右図のβ(=P(p))は、p=p0のときに、このロットが合格する確率がβだということです。すなわち、本当はロットの不良率はp0よりも大きいのに、合格にしてしまうことです。これは消費者(受け取り側)にとって不都合な判断で、この確率βのことを消費者危険といいます。
逆に、α(=1-P(p))は、本当はロットの不良率はp0よりも小さく合格すべきなのに、不合格だと判定される確率になります。これを生産者危険といいます。
生産者危険αは、第1種の誤りともいいます。本当は合格なのにちょっとしたことにあわてて不合格にしてしまうことから「あわて者の危険」ともいいます(α=A=アワテ者)。消費者危険βは、第2種の誤りともいいます。本当は不合格なのに誤りに気付かないで合格にすることなので「ぼんやり者の危険」、β=B(ボンヤリ者)、α=A(アワテ者)とすれば覚えやすいですね。
しかし、このような方法ですと、αを小さくしようとすればβが大きくなり、βを小さくしようとすればαが大きくなります。これでは、どちらかが不満を持つことになります。
それで、p0を与えるのではなく、先にαとβを決めておき、それから適切なnやrを決めることにします。
通常は、α=0.05、β=0.10とします。
すると左図のように、αに対するp1とβに対するp2の2つのpが計算できます。そして、抜取検査の結果が、
p1より小のとき:合格とする
p2より大のとき:不合格とする
p1とp2の間のとき:合格・不合格を決定しない
とするのです。決定しないのでは困りますから、さらにnを大きくすることにより、さらに詳しく調べるとするのです。nを大きくすれば、右図のように全数検査に近づくので、合格・不合格の判定がしやすくなります。このような方法を多段階抜取調査といいます。
p1は、生産者がなるべくそのロットを合格とさせたい不良率の下限で、合格品質水準(acceptable quality level, AQL)といいます。p2は、消費者がそのロットを不合格とさせたい不良率の上限で、限界品質(limiting quality, LQ)といいます。
α 生産者危険 第1種危険 あわて者 0.05 p1 合格品質水準
β 消費者危険 第2種危険 ぼんやり者 0.01 p2 限界品質
すなわち、抜取検査では、
α≧1-P(p1) ∴P(p1)≦1-α
β≧P(p2)
となるnとrの組のうち、nが最小となるものを求めることになります。


過去問題: 「抜取検査とOC曲線」