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文書類の電子化・電子商取引に関する法律

学習のポイント

企業では,商取引の契約や領収書,財務諸表,税務申告書など多様な紙の帳票や帳簿だどの文書があります。これまでは,紙の文書だけを法的な証拠として認めており,その保存を法的に義務付けていました。ところが現在では,それらの情報を電子化して処理していますし,電子商取引も広く利用されています。その電子データも法的な証拠とすることができれば,事務処理や保存のコストを大幅に削減することができます。そのような観点から,これまでの法律を改正したり,新しい法律を制定するようになってきました。
   電子帳簿保存法,IT書面一括法,電子署名法,e−文書法

また,電子商取引が普及するのに伴い,それに特有な問題が発生し,従来の法律では適用できないようになりました。その観点からも法律改正や新法律が必要になりました。
   特定商取引法,迷惑メール防止法,電子契約法,個人情報保護法
(個人保護法に関しては,別シリーズ「個人保護法」で取扱っています)。

キーワード

電子帳簿保存法,IT書面一括法,電子署名法,e−文書法,特定商取引法,迷惑メール防止法,電子契約法


文書の電子化に関する諸法律

●電子帳簿保存法
電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律

公布:平成10年3月  施行:平成10年7月
改正:平成14年12月 施行:平成15年2月
http://www.ron.gr.jp/law/law/densi_kz.htm

納税関係書類は監査証跡のために長期間(5年〜10年)保存することが義務付けられていますが,従来は,領収書,請求書などの原始伝票や,仕訳帳総勘定元帳などの各種帳簿,貸借対照表,損益計算書などの決算書類をそのまま保存することになっていました。これでは,膨大な量になるので保管スペース確保のための費用もかかる(大企業では,年間数億円にもなることもあります)し,それを基にした監査作業も面倒です。しかも多くの企業では,会計業務をコンピュータで行っているのですから,そのデータを利用できれば事務経費を大幅に削減することができます。それで,国税関係については,電子データにより保存してもよいようにしたものです。

しかし,電子データは容易に改ざんできますので,いわゆる二重帳簿を作りやすい環境です。また,電子データそのものは見ることができません。真実性と可視性を確保するために,「一定条件を付けて認める」ことにしています。

真実性の確保
入力データ訂正の履歴が明確にわかるような機能を付けること
改ざん防止の機能を付けること
入力から出力までの処理過程(プログラム)を保存し,その説明書を付けること
可視性の確保
データを読めるように,プログラム,ディスプレイ,プリンタ,操作説明書を備付けること
画面や書面を整然と明瞭に,速やかに出力できること
取引年月日,勘定科目,取引金額などによる検索機能を備えること

電子データとは磁気ディスクやCD-ROMでもよいのですが,後述する条件に合致する媒体は当時ではCOM(Computer Output Microfilm)マイクロフィルム)程度しかなく,ROMでの保存が一般的でした。ところが,原始伝票をROMにコピーしてインデクスをつける作業に労力や費用がかかり,あまり普及しませんでした。
 その後,後述の「e−文書法」により,電子データにしてよい文書類が増大し,スキャナで読み込んだデータも利用できるようになりました。現在では,電子データを情報システムとともに保管するようになってきました。特に最近では,電子取引が急速に普及してきましたので,それによる電子データを活用するようになりました。
 しかし,その効果を得るためには,
  ・これらの要件を満たしたシステムにするコスト
  ・システム概要,仕様書,操作説明書等のドキュメント整備に要するコスト
  ・データ作成当時のシステムを長期に渡って保持するコスト
などがかかります。

●IT書面一括法(電子書面一括法)
書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律

公布:平成12年11月,施行:平成13年4月
http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0001048/0/1020syomen.pdf

従来は書面による手続きを義務付けている法律を改正して,電子メールやWebページなどの電子的手段も認めることで電子商取引の促進を狙った法律です。これにより,証券取引法や宅地建物取引業法など50本の法律が改正されましたが,公正証書が必要なものなど特定の法律については従来どおり書面を必要とすることになっています。
 この法律があっても,原則が「紙」であるとの考え方は変りません。送信者側も受信者側も「電子的手段」の方が望ましいと判断する場合に限り,電子メール等でもよいとしているのです。しかし,書面での売買契約書や領収書では印紙税がかかりますが,電子メール等の電子媒体を利用したものは印紙税の対象外とすることになりましたので,その面からも電子商取引を活性化することに役立っています。

●電子署名法
電子署名及び認証業務に関する法律

公布:平成12年5月,施行:平成13年4月
http://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/digitalsign-law.htm

民間の間での契約や行政への申請などでは実印を捺印する必要がある場合があります。それらの文書を電子媒体にすると,捺印することができません。また,電子メールなどでは以前から本人を証明する手段として電子署名が使われてきました。この法律は,電子署名が実印と同じ法的効果があることを認めたものです。これにより,本人による一定の要件を満たす電子署名が行われた電子文書等は,真正に成立したもの(本人の意思に基づき作成されたもの)と推定されます。
 また,実印での印鑑証明のように,電子署名が本人のものであることを認証する必要があり,従来からベリサインなど民間機関が認証業務を行っています。この法律では,認証業務のうち一定の基準を満たすものは総務大臣,経済産業大臣及び法務大臣の認定を受けることができる制度が導入されました。ここでも民間機関を認定していますが,「電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律」(公的個人認証法)により,市役所などの地方自治体も認定を得て認証機関になるのが一般的になってきました。

○行政手続オンライン化関係3法

「電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律」(公的個人認証法)とともに平成14年12月に公布された「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律」(行政手続オンライン化法)と,「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(整備法)を合わせて,「行政手続オンライン化関係3法」といいます。
 行政手続オンライン化法では,行政手続のオンライン化により,国民の利便性の向上と,行政運営の簡素化・効率化を図ることを目的として,行政機関への申請・届出等の行政手続について,書面によることに加え,オンラインでも可能とするための法を新たに整備することを定めています。行政手続オンライン化法の規定のみでは手当てが完全ではないもの,例外を定める必要があるものについて,71の個別法律の改正を束ね一つの法律としてとりまとめたのが整備法です。

○電子公告法
電子公告制度の導入のための商法等の一部を改正する法律の概要

公布:平成16年6月,施行:平成17年2月
http://www.moj.go.jp/HOUAN/KOUKOKU/refer02.html

株式会社が決算などを公告するとき,従来は官報,日刊新聞紙で公告することになっていましたが,インターネットホームページへの掲載(電子公告)でもよいことにしました。そして,公告がホームページに掲載されていたことを保証する調査機関制度を設けました。

●e−文書法
民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律

公布:平成16年12月,施行:平成17年4月
http://www.ron.gr.jp/law/law/minka_it.htm

これまで,多くのペーパーレス化のための法的措置がとられてきましたが,この法律は,その集大成とでもいうべきものです。
 帳票類や財務諸表,取締役会の議事録など,商法や税法などで企業に保存が義務付けられている文書について,電子化された文書ファイルでの保存を認めた法律です。紙の文書をスキャナで読み取った画像データも一定の要件を満たせば原本として認められます。これにより,銀行法や証券取引法など251の法律が一括改正されました。しかし,損益計算書や貸借対照表,高額の領収書などは対象から外されたため,完全なペーパーレスが実現したわけではありません。
しかし,日本経済団体連合会「税務書類の電子保存に関する報告書」(2004年3月)によれば,。同報告書では,電子保存容認による効果は,税務文書に限定しても,保管コスト,運搬コスト,廃棄コスト,税務調査のための印刷コスト,取扱いのための人件費の総額は3000億円にも達するそうです。

経済産業省「文書の電磁的保存等に関する検討委員会」の中間報告書として「文書の電子化を促進するための企業向けガイドライン」を公表しています。そこでは,文書の電磁的保存の要件として,次の事項をあげています。

見読性
入力したデータやスキャナで読み込んだデータは,直ちに明瞭かつ整然とした形式で表示したり印刷できること。
完全性
電子データが保存義務期間中に滅失したり改ざんないための措置を講じること。改ざんされたときはその事実がわかるようにすること。
機密性
電子データへ不正なアクセスを防ぐ措置を講じていること。
検索性
電子データを容易に検索できるように,体系的に構成する措置を講ずること。

そして,電磁的保存の具体的方法に係る努力基準として,ログの保管やアクセスの制限など,具体的な事項を列挙しています。

電子データは改ざんが容易ですので,改ざんを防止すること,改ざんされていないことを証明することが必要です。それには,「その電子データがいつの時点で作成されたもので,それ以降現在に至るまで改ざんされていないこと」を証明する技術にタイムスタンプ(時刻認証技術)があります。電子データに対してタイムスタンプを埋め込むことによって,を第三者的に証明することが可能となります。

詳細:「e-文書法」


電子商取引に関する諸法律

●特定商取引法
特定商取引に関する法律

公布:平成12年11月,施行:平成13年6月
最終改正:平成16年5月
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S51/S51HO057.html

この法律は,電子商取引だけを対象にしたものではありませんが,インターネットによる電子商取引での消費者保護については,消費者に意図しない申込みを行わせるような行為(誤認を生じさせやすい画面設定)を行政処分の対象にしています。

消費者が気づかない操作により契約の申込になっている場合です。たとえば,連絡先のようなメールアドレスや詳細説明のようなURLをクリックすると自動的に申込になってしまうというような画面設定がこれにあたります。ポルノサイトで,「次に」をクリックすると次第にヌードになっていくのですが,ある所から,何の表示もなしに(容易に気づかない表示だけで)有料のページに入るというような手口が流行したこともあります。
 電子契約の申込みを受ける場合において,消費者が申込みの操作を行う際に,容易に申込みの内容を確認したり取消ができるしていない場合です。操作ミスでクリックしたら,訂正できずに契約されてしまうな画面設定は行政処分の対象になります。

●迷惑メール防止法
特定電子メールの送信の適正化等に関する法律

公布:平成14年4月,施行:平成14年7月
改正:平成15年7月,施行:平成16年4月
http://www.ron.gr.jp/law/law/email_te.htm

いわゆる迷惑メールやスパムメールといわれる電子メールの対策です。消費者及び受信者から当該メールの送付了承を得ていない商業広告を送るときは,以下のような表示を行うことが義務づけられました。

現実には,このようなメールに「受信拒否」の返事を送るのは,それを見ていることを知らせることになるので不適切です。日本産業協会(mailagain@nissankyo.jp)と日本データ通信協会(mailagain@de kyo.or.jp)は,表示義務や再送信禁止義務に違反していると思われるメールを受け取ったときの情報提供を求めています。

●電子契約法
電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律

公布:平成13年6月,施行:平成13年12月
http://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/digitalsign-law.htm

この法律のポイントは,次の2点です。

消費者の操作ミスの救済
BtoC(事業者・消費者間)で,消費者がWebページで申込みをするとき,消費者のミスによる申込は無効にできます。民法では,消費者が「重大な過失」があったときは,それがミスであっても契約が成立すると主張できるのですが,この法律により,消費者が実際に申込みをする前に,「この内容でよいですか?」というような確認画面などによる措置を事業者側が講じないと,要素の錯誤にあたる操作ミスによる消費者の申込みの意思表示は無効となります。
なお,申込みのボタンをクリックしてからの応答が遅いためにもう一度クリックすることによる「重複発注」もトラブルの原因になります。これに関しては法的には明確になっていません。でも次の条項により承諾通知が来るまでは契約が成立していないので,その間に取消ができるのであれば救済できます。
契約の成立は承諾の通知到着時
民法によれば,売り手の店舗側から承諾の通知が発信された時に契約は成立することになります。インターネットでは瞬時に申込者に到着しますので,電子契約では,承諾の通知が申込者に到達した時に成立することになりました。また,電子メールは途中で紛失してしまうことがあります。このときは契約が不成立になりますので確認が必要です。なお,申込みのWebページで「申込を受け付けました」との表示がされれば,その時点で契約が成立したことになります。

理解度チェック

過去問題: 「文書電子化・電子商取引関連の法律」