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特許法の概要

学習のポイント

特許法は元来発明に関する知的財産権を対象にしたものですが,ソフトウェア特許やビジネスモデル特許など,情報システムの分野でも重要になってきました。ここでは,情報システムに関係する部分を主にして,特許法の概要を理解します。

キーワード

特許法,新規性,進歩性,有用性,ソフトウェア特許,カーマーカー法特許,ビジネスモデル特許,逆オークション特許,ワンクリック特許


特許法[平成17年10月]( http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S34/S34HO121.html)

特許権の目的

特許権は知的財産権の一つであり,特許法は「発明の保護および利用を図ることにより,発明を奨励し,もって産業の発達に寄与することを目的」としています。

特許の対象

特許に相当するのは「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なものをいう」であり,次の3要件をすべて満足するものです。

新規性
特許申請時に知られていないこと。論文発表,新聞記事になったものは不可
進歩性
その分野の専門家でも容易に考え出すことができないこと
有用性
その発明が産業の発達に役立つもの

特許法の特徴

特許法と著作権法での違いを下表に掲げます。

          著作権法        特許法
   目的     文化の発展への寄与   産業の発展に寄与すること
   保護対象   著作物(表現)     発明(アイデア)
   権利者    著作者         先願者
   権利の発生  自動的に発生      審査等の手続が必要
   権利の消滅  50年(映画は70年) 20年
   権利の維持  無料          特許料が必要
   権利の排他性 偶然なら侵害にならない 知らなくても侵害になる

権利の発生
著作権法では,著作をした時点でなんらの手続をしなくても,著作者の権利が生じます。それに対して特許法では,特許庁による審査・査定が行われ,特許として登録され権利が与えられます。出願から登録の間,登録されてからも,他者から新規性や進歩性など特許に対する異議をすることができます。
権利の排他性
著作権法では,以前にある他人の著作物と同一(類似)の著作物を作成しても,それが偶然になされた(その著作物を見ていないなど)ものであるならば,著作権を侵害したことにはならず,両者が権利を持ちます。
それに対して特許法では,先に特許があることを知らないで同じ方法で製品を開発して販売したときには特許の侵害となり,それによる損害賠償を請求されます。

ソフトウェア特許

自然法則を利用していないものや自然法則そのものは特許の対象にはなりません。それで数学公式やアルゴリズムは特許にはならないのです。ところが,線形計画法のカーマーカー法という解法が特許になりました。また,OSなどの基本的なソフトウェアでは,ハードウェアと組み合わせることにより多くの特許があります。

「カーマーカー法特許」1984年
 これは線形計画法を高速に解くアルゴリズムです。にベル研究所のカーマーカーにより米国で出願され成立,日本でもAT&T社から「最適資源割当て方法」として出願され成立しました。発明の一部は純数学的なものであるが,全体としては自然法則を利用しているとして特許になったのです。

ビジネスモデル特許

Webサイトを用いた販売やポータルサイトなどは,有効性の高いビジネス上のアイデアですが,自然法則ではないし,インターネット以外では以前から行われていたのですから新規性に疑問があります。ところが,「逆オークション特許」や「ワンクリック特許」などが認められるようになりました。
 ビジネス関連での「発明」が,自然法則を利用しているとされる場合としては,「ソフトウェアとハードウェア資源とが協同した具体的手段によって実現されている」ことが必要になります。また,進歩性があるためには,ビジネスとコンピュータ技術の双方の知識を持つ者でも容易に思いつかないものであることが求められます。

「逆オークション特許」プライスライン・コム,1998年
買い手が価格や希望条件を提示して,仲介人が複数の売り手に見積もりを依頼し,選択したものを買い手に提示して取引が成立するというシステムです。このような取引方法は実社会では以前から行なわれていたのですが,それをインターネットで行なうためのハードウェアなどと組合わせることにより特許になりました。
「ワンクリック特許」 アマゾン・コム,1999年
顧客がインターネットで商品を注文するとき,初回にはクレジットカード番号や個人情報を入力しますが,次回からは,それを記録したクッキーを用いることにより,入力を簡単にするという仕組みです。これには,進歩性がないのではないかと問題になりました。
 なお,日本では,アマゾン・コムが日本での特許出願をする以前にソニーがが同様な仕組みを出願しており審査請求はしなかったので特許として成立はしていません。

日本では,ビジネスモデルそのものに独占権を与えるものではないとされており,同様なビジネスモデルであっても,その実現手段での自然法則の利用が異なれば特許に抵触しないと解されています。しかし,米国ではビジネスモデルそのものが特許になるなど,国により異なることがあります。
 また,そのビジネスモデルを実現するには特許での方法が不可欠ならば,特許を得ることにより,ビジネスモデルそのものを実質的に独占することができます。

他社にこのような独占をされるのは困ります。それに対抗するには,自社がビジネスモデルを出願してクロスライセンス(特許を互いに交換する)に持ち込むとか,それに関連するプログラムを著作権でのプログラム登録しておくことで特許の新規性に対抗するなどの方法がとられます。


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