4つの類型
大学で情報教育を行う目的は多様ですが、それを次のの4類型にまとめました。この類型は説明の都合で私が仮につけたもので、情報教育の体系ではありません。

パソコンやインターネット操作技術の基本は、高校で情報教科が正課になっただけでなく、日常生活ですでに習得しています。しかし、これらの技能は、大学での学習や研究に不可欠なため、さらに高度な技能が求められます。そのため、ほとんどの大学で「コンピュータ演習」のような科目を開講しています。
この科目の運営で問題なのは、学生の習熟度にばらつきがあることです。本来高校までに修得しているはずの基本操作すらあやしい学生から、教員よりもはるかに習熟している学生まで多様です。
また、大学側では、学生へのサービス、学生確保対策としての広報活動、遠隔教育などの試みなどのためにITの活用が重要な課題になっています。
メディア教育開発センター(NIME)「全国高等教育機関におけるIT利用実態調査」 (http://www.nime.ac.jp/~itsurvey/pub/it-use/graph/it-use_1999-2004/index.html)は、大学でのIT利用状況と、IT利用での阻害要因を、次のように示しています。

ITを活用した授業では、プレゼンテーションソフト(パワーポイントなど)を用いたり、録画ビデオを用いたりする講義、学生にWebで資料を収集させる授業などが広く行われています。シラバスや授業概要をWebに公開する大学も急速に増えてきました。しかし、教材を自作した授業はまだ少なく、録画授業のWeb上への掲載や通信衛星などによる授業は、まだほとんど行われていません。また、学生へのサービスとしては、電子メールや電子掲示板による休講通知や事務連絡、宿題の提出、質問回答などが広く行われています。図書資料のデータベース化も普及してきました。
IT利用での阻害要因としては、機器設備の導入や維持の費用がかかることと、教員の負荷が増大することが上位にあげられています。「特定の者に負担がかかる」のは、まだ教員全体のリテラシーが低く、しかも、「支援スタッフが不足している」ためだと考えられます。
それに対して、「授業で利用する必要がない」や「利用による教育効果がない」は少なくなっています。IT利用の効果は広く認められているといえましょう。
ソフトウェアの輸出入では、日本はあまりにも輸入超過です。システム開発(カスタムソフト)を中国やインドにオフショア発注していることが問題になっていますが、それよりも、ベーシックソフト(不特定多数のユーザを対象として開発されたソフトであり、言語プログラム、ライブラリ、ミドルウェア等を含む)やアプリケーションソフト(不特定多数のユーザを対象として開発された業種・業務ソフト)の輸入額(これらの輸入元はほとんどは米国)のほうがはるかに大きいのです。

また、ロボットや情報家電には、マイクロプロセッサが組み込まれています。ユビキタス社会では、マイクロプロセッサ、RFID(微小無線チップ)、小型センサーなどの技術が不可欠です。それらのソフトウェアを組み込みソフトウェアといいます。この分野で優位性を確立することが国家的戦略にもなっています。
ベーシックソフト、アプリケーションソフトでの遅れを挽回し、組み込みソフトウェアでの優位性を維持発展させるには、創造性のある高度なIT技術者の育成が求められます。
類型Cは、主に情報サービス業などに所属するベンダ技術者を育成するための教育です。次節以降の主な対象が類型Cですので、ここでは省略します。なお、ユーザ企業でのIT部員は、社内においては提供側であり、ベンダへの発注者という面では利用者側ですので、類型Cと類型Dの両方の対象になります。
企業では大部分の業務がITを利用しています。しかも、実際に企業の収益改善に影響するのは、ハードウェアやソフトウェアではなく、どのような分野にどのようにITを活用するかなのです。そして、その巧拙が企業の存亡にまで影響する時代になってきたのです。そのため、経営者や利用部門(営業部や経理部などIT以外の部門)の人たちがIT利用に関する知識を持つことが必要です。類型Dは、このような人を対象としたものです。
具体的には、経営戦略とIT戦略の関係、IT戦略から販売システムや会計システムなどの個別システムへの展開、IT投資の費用対効果、システム開発でのニーズの整理、プロジェクト管理のような知識が求められます。