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会計基準・会計監査

キーワード

企業会計、会計公準、企業会計原則、損益計算書原則、貸借対応表原則、会計監査、外部監査、内部監査、会社法、金融商品取引法、内部監査、管理会計、税務会計


企業会計

ここでの会計とは財務会計のことにします。
 企業会計とは、会社の支出や販売実績を記録し、企業の財務状況を主とした経営状況を、ステークホルダ(利害関係者)へ報告するための仕組みです。具体的には、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表の作成になります。
 主なステークホルダには、次のものがあります。

このように企業会計の信頼性は、他分野に大きな影響をもつことから、いろいろな基準や法律があります。
 会計処理の基本的な考え方に関する基準として、会計公準と企業会計原則があります。これらは法的なものではありませんが、広く妥当と認められており、これに従うことが求められます。

会計公準

会計公準は会計理論や実務の基礎をなす最も基本的な概念や前提事項で、次の3つがあります。

企業実体の公準
企業を出資者から切り離し、独立した状態で考えることです。
継続企業の公準
企業を永続的な存在として考えることです。
貨幣的評価の公準
企業の経済活動の様々な数量単位を貨幣額で考えることです。

企業会計原則

企業会計の実務の中に慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められたところを要約したものであって、必ずしも法令によって強制されないでも、すべての企業がその会計を処理するに当って従わなければならない基準である。
企業会計原則は、「一般原則」「貸借対照表原則」「損益計算書原則」「注解」の4つから構成されています。

一般原則

企業会計全般において一般的、共通的な原則を明記したものです。次の7つの原則があります。

真実性の原則
企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。
ここでの「真実」とは絶対的な真実ではなく、会計処理には多分に主観的な判断が入りますが、定められた会計処理方法に従っていれば真実とされます。
正規の簿記の原則
企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。
すべての取引を検証可能な証拠に基づいて、秩序だった会計帳簿を作成することにより、財務諸表が正確であることを担保します。
資本取引・損益取引区分の原則
資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。
増資などの資本取引と商品販売などの損益取引を明確に区分することにより、増資で得た収入を売上計上したり、商品販売で得た利益を資本金に算入したりして粉飾決算することを防止できます。
明瞭性の原則
企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。
利害関係者が判断を誤らせることのないように、財務諸表記述の適切な区分や科目の配列、会計方針の注記などを要請するものです。
継続性の原則
企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。
決算を毎年定まった時期に、定まった会計処理で行うことです。恣意的に損益計算書の期間を変えたり償却方法を変えたりして、利益操作をすることを防ぎます。
「みだりに」とは、正当な理由による変更は認められることです。変更した場合は、変更した旨や理由などを財務諸表に注記することが求められます。
保守主義の原則
企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。
費用や損失は早めに引当金などにより計上すること、収益は確実なものを計上することです。
単一性の原則
株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。
株主総会や金融機関などには利益を大に、税務申告には利益を小にするなどの、二重帳簿を排除することです。どのような形式の財務諸表であっても、その基礎となる会計帳簿・会計記録は正規の簿記の原則によって作成された単一のものでなければなりません。

損益計算書原則(損益計算書の本質)

損益計算書は、企業の経営成績を明らかにするため、一会計期間に属するすべての収益とこれに対応するすべての費用とを記載して経常利益を表示し、これに特別損益に属する項目を加減して当期純利益を表示しなければならない。

発生主義の原則
すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。ただし、未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない。 前払費用及び前受収益は、これを当期の損益計算から除去し、未払費用及び未収収益は、当期の損益計算に計上しなければならない。
例えば掛で販売して実際の入金は来期であるとき、現金主義では費用支払をしたのに収益がないことになります。発生主義では来期入金を未収収益として計上することにより損益が明確になります。
総額主義の原則
費用及び収益は、総額によって記載することを原則とし、費用の項目と収益の項目とを直接に相殺することによってその全部又は一部を損益計算書から除去してはならない。
対応する費用と収益を損益計算書において相殺して、その差額だけを表示したのでは、取引の規模を把握することができません。明瞭性の原則により、費用と収益を個別に表示する必要があります。
費用収益対応の原則
費用及び収益は、その発生源泉に従って明瞭に分類し、各収益項目とそれに関連する費用項目とを損益計算書に対応表示しなければならない。
経営成績を適正に示すには、個々の活動でえた収益とそれに要した費用を明確にする必要があります。例えば、商品の仕入代金は、売上という成果を得るために生じたものです。前期に仕入を費用計上し、今期に売上を収益計上したのでは、発生源泉による収益項目と費用項目の対応が不明確です。売上を収益計上した時点で仕入代金を費用化することで、損益計算書において費用と収益が対応表示されることになります。

貸借対照表原則

貸借対照表は、企業の財政状態を明らかにするため、貸借対照表日におけるすべての資産、負債及び資本を記載し、株主、債権者その他の利害関係者にこれを正しく表示するものでなければならない。ただし、正規の簿記の原則に従って処理された場合に生じた簿外資産及び簿外負債は、貸借対照表の記載外におくことができる。

資産・負債・資本の記載の基準
資産、負債及び資本は、適当な区分、配列、分類及び評価の基準に従って記載しなければならない。
総額主義の原則
資産、負債及び資本は、総額によって記載することを原則とし、資産の項目と負債又は資本の項目とを相殺することによって、その全部又は一部を貸借対照表から除去してはならない。
注記事項
受取手形の割引高又は裏書譲渡高、保証債務等の偶発債務、債務の担保に供している資産、発行済株式1株当たり当期純利益及び同1株当たり純資産額等企業の財務内容を判断するために重要な事項は、貸借対照表に注記しなければならない。
繰延資産の計上
将来の期間に影響する特定の費用は、次期以後の期間に配分して処理するため、経過的に貸借対照表の資産の部に記載することができる。
既に支払った費用の効果が発現するのに長期間からる場合、その費用を経過的に貸借対照表上繰延資産として計上できます。
資産と負債・資本の平均
貸借対照表の資産の合計金額は、負債と資本の合計金額に一致しなければならない。
貸借対照表の区分
貸借対照表は、資産の部、負債の部及び資本の部の三区分に分ち、さらに資産の部を流動資産、固定資産及び繰延資産に、負債の部を流動負債及び固定負債に区分しなければならない。
貸借対照表の配列
資産及び負債の項目の配列は、原則として、流動性配列法によるものとする。
流動性配列法とは、現金化しやすい、短期間で原因になる順序に並べるということです。資産の部では全体として流動資産→固定資産の順、流動資産の中では、現金預金→売掛金→製品→仕掛品のような順にします。

企業会計原則注解

企業会計原則注解は、企業会計原則の解釈について規定したものです。特定の項目に対する補足的な説明や具体的な内容を示しています。かなり多様ですので「重要性の原則」だけを例示します。

重要性の原則
企業会計は、定められた会計処理の方法に従って正確な計算を行うべきものであるが、企業会計が目的とするところは、企業の財務内容を明らかにし、企業の状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにすることにあるから、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらないで他の簡便な方法によることも正規の簿記の原則に従った処理として認められる。
重要性の大小によって、会計処理の方法や表示を変えてよいということです。これは、一般原則「正規の簿記の原則」の例外になります。また、決算書の金額は、一円単位だけでなく、千円単位または百万円単位で表示しますが、通常は端数を切り捨てるので、小計や合計が一致しないことがあります。これは、一般原則「明瞭性の原則」の例外です。

(注)会計基準の国際化

日本では、企業会計原則が会計基準になっていますが、海外ではそれぞれの会計基準があります。商取引や投資のグローバル化の進展により、会計基準の国際的統一が求められるようになってきました。
参照:国際会計基準(IFRS)

米国会計基準
米国独自の会計基準で、米国財務会計基準審議会(FASB)が発行する財務会計基準書(SFAS)などの従っています。米国で上場している日本企業もこれに基づいた財務諸表を作成しなければなりません。
IFRS(国際会計基準)
EUでの会計基準統一から発展してきたものです。国際会計基準審議会が作成した会計基準で、EU域内の上場企業はこの導入が義務化されています。日米を含めた国際会計基準にしようという動きが進んでいます。
J-IFRS
日本企業にとってIFRSへの移行が重要課題ですが、ハードルが高いので、IFRSの内容を、日本国内の経済状況などに合わせて調整した会計基準です。2016年3月期末より適用されていますが、従来の企業会計原則のままの企業も多く残っています。

会計監査と関連法規

法的に実施が定められている監査を法定監査といいます。会社法と金融商品取引法では、財務報告および監査証明が義務付けられています。
 企業会計原則そのものには法的拘束力はありませんが、これらの法律では、財務諸表の作成には企業会計原則に準拠することが暗黙的に前提になっています。
 会社法監査と金融商品取引法は類似していますが、監査が義務付けられている会社、監査が準拠する根拠、監査に関係する書類などで違いがあります。上場している大企業は両方の監査を受けることになります。

外部監査

会社法監査
会社法は、会社の設立、組織、運営及び管理について定めた法律です。
会社法監査とは、会社法の規定により作成される「計算書類」が適法に作成されているかどうかについて行う監査です。
監査対象会社:大会社(資本金が5億円以上、または負債金額が200億円以上)および指名委員会等設置会社及び監査等委員会設置会社
監査根拠:会社法、会社法計算規則、会社法施行規則など
財務書類:計算書類または連結計算書類など。主として損益計算書と貸借対照表
主報告先:株主
金融商品取引法監査
金融商品取引法とは、株式や証券などの取引の公正化・透明化を目的と法律ですが、その基本となる有価証券報告書(財務書類など)の適正性を確保するための監査について規定しています。
監査対象会社:上場している会社、株式や社債を公募する会社など
監査根拠:財務諸表等規則、連結財務諸表等規則など
財務書類:損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書、有価証券報告書など。注記が大量
主報告先:投資家や証券取引など各種規制当局

内部監査

監査役監査
監査役により行われる監査です。社内監査ですが、会計監査の実施が義務付けられています。外部監査が行われている場合、監査役による会計監査は、会計監査人の監査の方法又は結果の相当性を判断するに留まることができます。
なお、会計監査だけでなく、取締役の職務執行の適法性を確認する業務監査が行われます。
監査委員会監査
委員会等設置会社において監査委員により行われる監査で、監査役監査とほぼ同じ内容です。

関連用語

会計の類似用語

簿記
会計(accounting)学は、「正しい財務諸表とは何か」を体系的に確立する分野です。簿記(bookkeeping)学は、会計体系に従って「正しい財務諸表を作成すること」のための技術や手続きの分野で、簿記とはそれを行うことです。簿記の中心は仕訳記帳になります。通常、会計というときは簿記も含みます。
経理
経理とは会計の同義語だといえます。 経理部(Accounting Division)の主業務が簿記業務ですが、請求書や支払業務、預金などお金の管理、財務諸表などの決算書の作成、税務処理などを担当します。
財務
財務(finance)とは、企業戦略の一部である財務戦略を立案し実施することであり、実施面では会社が事業のための資金を調達・運用することです。融資や増資・社債発行などが重要な任務になります。
このように経理と財務は異なる分野で、大規模企業では経理部と財務部がありますが、経理部が財務業務も担当していることもあります。経理部の定例業務の多くがIT化されているため、経理部の主要業務が財務業務へ移行してきました。

財務会計以外の会計

管理会計
企業での会計には、財務会計と管理会計があります。財務会計が経営成績の社外への報告を目的としているのに対して、管理会計は経営活動における意思決定の資料として用いる会計です。管理会計は社内での資料ですので、これに関する基準や法規はありません。
税務会計
税務会計は、法人税など納税のための会計です。
法人税の課税所得計算は、損益計算書の税引前当期利益を基にしますが、法人税法で定められた調整項目を加減算することで課税所得を求め、法人税額を算出するのですが、かなり複雑な処理を伴います。
税務会計には正当性が求められます。法定監査はありませんが、税務当局が内容に不審を抱いたときは税務調査を受けることになります。