IMD「World Competitiveness Yearbook」、WEF「Global Competitiveness Reports」
多くの機関が、多様な事項について各国の比較をしてランキングを発表しています。ここでは、国際競争力とITインフラに関する代表的なものを掲げます(電子政府に関しては「電子政府の国際ランキング」を参照)。
ここに掲げたランキングは、世界的に高い評価を得ているので、世界における日本の地位を論じるときによく引用されるものです。しかし、この順位が上がった/下がったとして一喜一憂したり、他国とのわずかな順位の違いを強調するのは不適切です。
国際競争力ランキングで有名なのが、IMDの「World Competitiveness Yearbook」とWEFの「Global Competitiveness Reports」です。これらは、経済(企業)の国際競争力の評価ですので、ITそのものとは異なりますが、競争力にIT活用が大きく影響しています。
IMD (International Institute for Management Development:国際経営開発研究所)は、スイスのビジネススクールです。毎年、約60の国・地域を対象に、統計データ、独自の調査やアンケート結果をもとに、各国・地域の競争力を評価して「World Competitiveness Yearbook」(WCY、世界競争力年報)を発表しています。
総合(overall)ランキングでは、日本は、1980年代は「Japan as No.1」だったのですが、土地・バブルの崩壊を引き金にした平成不況、ダウンサイジングやインターネットなどのITのパラダイムシフトによるIT革命の流れに乗り遅れたことなどから、順位が急速に低下して2000年頃には20位以下になりました。逆に、この流れに積極的に対応した北欧、東アジアの競争力が増大しました。(図表)
その後、日本は国家戦略としてIT推進など競争力向上政策を進めてきたのですが、他国も同様な努力をしているので、横ばい状態にあり、往年の地位には遠い状況です。2000年当初と比較して、2000年代末には次のような変化が見られます。(図表)
・北米(米国・カナダ)の強さは変わらない。
・中国が20位以内に入ってきた。
・スイス、オーストリア、英国など、西欧の一部の国が復活してきた。
・カタールやイスラエルなど中東も向上してきた。
・北欧諸国も上位ではあるが、順位は下げ10~15位程度になった。
・日本は、年により上下はあるが、20位近辺で変化なし。
この総合ランキングは、経済状況、政府の効率性、企業の効率性、インフラの4つの大項目(factors)について300以上の小項目を総合したものです。企業活動を支援する環境や全要素生産性の視点が重視されており、国力や経済力そのものの指標だとするには無理があります。
日本は、科学技術やITなどのインフラは進んでいるのですが、国の財政や産業に関する施策が効果をあげていないことが順位を下げています。
WEF(World Economic Forum:世界経済フォーラム)は,世界賢人サミットともいわれるダボス会議で有名です。非政府の立場で,世界で起こっている(起こりつつある)諸分野の課題につき提言をしています。先のWorld Competitiveness Yearbookは,1995年までIMDとWEFの共同研究で行われてきましたが,1996年から独立に行うことになり,WEFでは「Global Competitiveness Reports」として発表しています。
WEF「Global Competitiveness Reports」での総合順位は、IMD「World Competitiveness Yearbook」と比べて高くなっています(図表)。 WEFでは、130以上の国・地域を対象としており、IMDよりも多いのに順位が上なのですから、両者にはかなりの差があるといえます。
これは、評価項目や評価基準が異なるからです。WEFでは12の大項目、100以上の項目について評価しています。IMDとWEFの評価項目は似ていますが、IMDが企業活動をサポートするビジネス環境整備を重視しているのに対して、WEFは国の生産性能力に関する要因を重視しています。そのため、WEFでは先進国のランキングが高くなる傾向があります。
それでも、日本は技術や市場などは高いのに、マクロ経済、投資市場の洗練性、制度的環境が低いという傾向はIMDの結果と似ています(図表)。
このように、IMDとWEFの評価には違いがあるのですが、おおまかな傾向は似ています。(図表)
ITU(International Telecommunication Union:国際電気通信連合)のDOI(Digital Opportunity Index:デジタル機会指数)は、デジタル・オポチュニティ/デジタル・デバイドの度合いを測定してまとめています。
3つの基本指標
・社会基盤(Infrastructure):インターネットの普及率など
・機会(Opportunity):所得に対する通信料金の比率など
・利用(Utilization):インターネット利用率など
この分野での権威ある調査なのですが、不定期にしか実施されず、最新版は2007年です。そこでは、日本は韓国に続く2位になっています。(図表)
また、ITUはIDI(ICT Development Index:ICT発展指標)を発表しています。これはDOIにICT(情報通信の状況)を加えたものです。
3つの基本指標
・アクセス(ICT access):電話、パソコン、インターネットの普及率など
・利用(ICT use):インターネット利用者数、ブロードバンド契約者数など
・スキル(ICT skills):就学率、識字率など
最新版(2007年)では、スウェーデンが1位、韓国が2位で、日本は12位になっています。(図表)
これらは日本が進んでいるように思いがちですが、そうでもないのです。携帯電話、パソコン、インターネットの普及率は、実際には既に飽和状態になっているのですが、日本が超高齢化社会に達しているからでしょうか、数字では低いのです。高等教育での順位が低い理由は私にはわかりません。博士比率が低いこと、情報系の大学・大学院進学率が低いことからでしょうか。
WEF「Global Competitiveness Reports」もIMD「World Competitiveness Yearbook」もビジネス全般を対象にしたものですが、WEFはITを対象にした「The Global Information Technology Report」を発表しています。ここでは、IT環境、対応力、利用状況の観点から競争力を評価しています(図表)。ここでも企業に関する項目が高く、行政に関する項目が低く評価されています。
WEFでの日本の順位は、やや低く評価される傾向があります。総務省は、次のように反論しています。
WEFでは、多数の国・地域に共通して測定できる項目を採用しているため、ブロードバンドの高速・低廉な普及やロボット・高機能ディスプレイなど日本が非常に進んでいる分野、コンテンツ・アプリケーション利用や産業利用等に関する項目が少ない。(参照:「情報通信白書」平成21年「第2章1 ICT競争力ランキングによる評価」)
総務省は、国のIT推進戦略の評価や政策への資料として「日本のICTインフラに関する国際比較評価レポート」を公表しました。ここでは、ITの活用や国際競争力ではなく、ネットワークの普及度や料金などのインフラに限定しています。2003年~2009年版では、日本は総合第1位でした。(図表)
世の中の変化に伴い、調査項目を変えています。2010年からは「ICT基盤に関する国際比較調査」として、利用面を加えたところ順位はやや下がりました。ICTの基盤整備(技術面、コスト面)は優れているのに、利活用(特に政府の利活用)が遅れていることは他の調査と共通しています。