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e-JapanⅡ戦略


IT戦略本部は、2003年7月に「e-JapanⅡ戦略」を策定しました。これは、e-Japan戦略の実施の中間結果と状況変化を考慮し、大きな改訂をしたものです。

基盤整備の達成

e-Japanの最重要分野である「超高速ネットワークインフラ整備及び競争政策」は、計画に先んじて達成されました。
 超高速ネットワーク(ブロードバンド)は、2003年当初に計画の1千万世帯に達し、さらに急速に普及しました。
 e-Japan開始時には、通信回線料金が高いことが障壁だとされていましたが、2003年にはブロードバンドは世界で最も廉価な料金になりました。

ITの利活用

e-Japanでは「電子商取引ルールと新たな環境整備」「電子政府の実現」「人材育成の強化」を重点としていましたが、そのような基盤整備だけではなく、それらの成果を享受するには利活用の面を重視するべきだとされました。
 それで、e-Japanの期間中ではありますが、全面的に見直してe-JapanⅡを策定したのです。

e-JapanⅡでは、「ITの利活用による「元気・安心・感動・便利」社会を目指す」ことをキャッチフレーズに「IT基盤を活かした社会経済システムの積極的な変革」を行うとしています。
 そのために、「先導的取り組み」として効果性、緊急性、波及性などから7分野と、それを支える5つの「新しいIT社会基盤整備」(e-Japanからの発展)を掲げました。

先導的取り組み

医療
医療に関しては、
・患者が複数の医療機関において継続性のある治療が受けられること、
・医療機関における各種の重複(検査、投薬、事務作業等)を削減すること
・診療報酬請求業務の効率化及び合理化
などが大きな課題です。その実現のためのIT活用として、電子カルテ、診療報酬請求業務のオンライン化があります。
  1. 患者基点の総合的医療サービス、継続的治療等:、電子カルテのネットワーク転送・外部保存
  2. 医療機関の経営効率と医療サービスの向上:医療機関情報の国民への開示、第3者機関による審査
  3. 診療報酬請求業務の効率化:診療報酬請求業務のオンライン化
2001年に、最初のBSC感染牛が大量に発見され社会混乱が発生したことにより、食の安全が緊急課題になりました。それがここでのテーマになったと思われます。食品の安全性に関して予期せぬ問題が発生した際の原因究明のために、トレーサビリティシステムが必要になります。
  1. トレーサビリティシステムの構築による豊かで安心できる食生活の実現
  2. 食品の取引の電子化、農林漁業経営のIT化による消費者利益の増大:電子商取引の推進
生活
単身高齢者が増加するのに伴い、在宅健康管理の充実及び生活の質の向上が重視されるようになりました。大規模災害時の緊急情報伝達が被害を少なくする必須な条件だといわれるようになりました。自動検針はコストダウンだけでなく異常発見に効果的です。これらを実現するためのセンサー技術が発展してきました。
  1. 温かく見守られている生活の実現、家庭でのサービスの選択肢拡大:高齢者対象の遠隔ビデオ会話システムや在宅健康管理、ガス・水道・電気等の遠隔検針
  2. 緊急時の通報・連絡システムの確立
中小企業金融
1990年代からの「銀行の貸し渋り」が中小企業に大きな打撃を与えていることが社会問題になっていました。本来電子商取引は中小企業にとって機会となるはずなのに、当時はあまり普及していませんでした。その対策の第一歩として、行政や金融機関での手続きを簡素化すること、電子決済を普及することが必要だとされました。
  1. 与信方法の多様化や融資に関する手続の簡素化により、中小企業の資金調達環境を改善:信用保証事務手続のオンライン化、電子手形サービス
  2. 中小企業の売掛金回収のリスク軽減:エスクローサービス(第三者預託サービス)
人材育成は常に重視されていることです。ITを用いた教育として、遠隔教育やe-ラーニングが注目されるようになりました。
  1. 個の学習スタイルの多様化による個の能力向上と我が国人材の国際競争力向上:大学の遠隔教育、社会人等の在宅教育、弁護士、公認会計士等の専門職への遠隔教育
  2. .コンテンツ産業等の国際競争力の向上、海外における日本文化の理解増進:放送用コンテンツのネット配信、デジタルコンテンツの円滑流通環境の整備、 人材や資源の確保
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就労・労働
社会環境の変化により、求人側と求職側のアンマッチが拡大してきました。世界に比べて日本の労働時間があまりにも長く家庭生活にまで影響していること、通勤時間が長いことが長年の課題でした。これらの解決方法としてテレワーク的な勤務形態、SOHOなどの個人経営形態が注目されるようになりました。
  1. 適材適所で能力を発揮できる社会の実現:ネット求職活動の基盤整備、人材交流の円滑な推進
  2. 多様な就労形態を選択し、創造性・能率を発揮できる社会を実現:テレワークの推進
  3. ITを活用した起業や事業拡大の支援により、就業機会の創出・拡大:コンサルティング、情報提供等
行政サービス
・ITを活用した行政業務の合理化
・ITを活用した行政と住民の間の合理化、サービスの向上
の2つの分野があります。電子政府・電子自治体としてIT基本法から現在まで常に重視されている分野です。
  1. 「24時間365日ノンストップ・ワンストップ」の行政サービスの提供と行政部門の業務効率向上
  2. 国民が必要な時に、政治、行政、司法部門の情報を入手し、発言できる、広く国民が参画できる社会の実現:行政ポータルサイト、業務・システムの最適化計画の策定、重複投資の排除、文書・帳票の電子的保存
    (業務・システムの最適化計画は一般にEA(Enterprise Architecture)と呼ばれています。中央官庁では2003年に策定されました。)

新しいIT社会基盤整備

「先導的取り組み」を実現するための基盤です。e-Japanの重点分野を継続したものです。「新しい」とは、以前と異なる観点・切り口で体系化したこと、この数年での技術進歩や環境変化を取り込んだことだといってよいでしょう。

次世代情報通信基盤の整備
「超高速ネットワークインフラ整備及び競争政策」の発展です。
  • いつでもどこでも何でもつながるユビキタスネットワークの形成→参照:ユビキタス社会
    高速・超高速インターネットアクセス可能世帯の拡大、公共施設での双方向インターネット接続
    電波の有効利用推進、地上デジタル放送の全国環境整備(アナログ放送が終了したのは2013年)r> 外字の文字コード規格整備(おそらく住民氏名データの行政システム間整合性のためでしょう)
安全・安心な利用環境の整備
セキュリティの分野です。
  • 安心してインターネット等を利活用できる環境を構築
    情報セキュリティの啓発や注意喚起等の推進
    公共的分野の情報システムについて責任体制の明確化、連携強化等の体制整備
    安全な電子自治体の運用のための責任体制の確立
    DoS攻撃、コンピュータウイルス、不正アクセス等による被害を最小限にするための体制を確立
    専門家の育成、先導的基盤的研究開発の推進
    個人情報保護法案成立後、個人情報の適正な取り扱い確保のための施策推進(2003年成立れ,2005年全面施行)
次世代の知を生み出す研究開発の推進
  • 我が国がこれまで培ってきた世界に誇れる強い技術の強化
  • 重要性の高まるソフトウェア技術等の開発実証の推進
  • 先端基礎技術と応用技術の研究開発の推進
    超高速インターネット技術、IPv6の利活用、テレビ会議、デジタル放送技術
    新技術の社会的規範形成に向けた調査研究
    産学間連携、研究成果の社会移転、国際標準化の推進
    最先端のユビキタスネットワーク環境の実証実験の推進
利活用時代のIT人材の育成と学習の振興
  • 我が国の国際競争力向上のために、必要な高度IT人材を広範に育成
  • 遠隔教育等を活用して海外のIT人材の育成・確保
  • 障害者、高齢者も含む全ての人々が知的満足、新価値創造を可能にする社会の形成
    高度IT人材の育成強化、IT関連の大学院等の拡充
    Web学習コンテンツの教育機関等への流通
    日本発遠隔教育がアジア各国で受講可能な体制の整備、優秀な海外IT関連研究者の受入
    情報バリアフリー政策の推進
ITを軸とした新たな国際関係の展開
  • 各国との協力の下に、ネットワークインフラ整備、電子商取引、コンテンツ流通基盤整備等を2国間、多国間で推進
  • 特に、アジア地域内の連携強化のため「アジア・ブロードバンド計画」を着実に推進すると共に、新たにそれ以外の施策を 含めた包括的な協力関係を樹立する「アジアITイニシアティブ」を推進

2005年時点でのe-Japan戦略およびe-JapanⅡ戦略の評価は、e-Japanの達成状況で示します。