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LAN環境でのシステム形態

キーワード

ピアツーピア、CSS、3層構造、シンクライアント


システム形態

1980年代末からのダウンサイジングの動向により、多数のパソコンがLANで接続されています。利用者机にありサービスを依頼するパソコンをクライアント、その指示により処理を行う(高性能の)パソコンをサーバといいます。
 その代表的な形態を示します。

ピアツーピア

2台のパソコンが互いに直結している形態と,数台のパソコンがハブを介して接続している形態があります。
 互いのパソコンは対等であり,一方のパソコンから他方のパソコンにデータを転送したり,互いのパソコンのソフトやデータを操作したりできます。小規模のLANに向いています。

(NapsterやGnutellaなど、不特定多数の個人間で直接に音楽ファイルなどのやり取りを行なうインターネットの利用形態もピアツーピア(PtoP)といいますが、ここでのピアツーピアとは異なります。)

クライアントサーバシステム(CSS)

利用者がそれを通してサービスを要求するパソコンをクライアントといい、その要求を受けてサービスを行うパソコンやワークステーションをサーバといいます。なお、そのような形態のシステムをCSS(Client-Server System:クライアント・サーバシステム)といいます。一般的にはLANはCSSの形態になっています。

イントラネット

CSSが普及し始めた当時は、多様なLAN制御のシステムが混在していました。1990年代中頃から,インターネットが急激な普及・発展をしました。インターネットの技術(TCP/IPとWebブラウザ)を社内LAN環境に利用した形態をイントラネットといいます。現在のLANはほとんどイントラネットになっています。
 イントラネットにすることにより、次の効果が得られます。

参照: 「インターネットによるTCOの削減」

3層構造

情報処理は次の3機能に区分することができます。

プレゼンテーション
操作者とコンピュータの接点。命令やデータの入力や結果の表示の機能。
これがクライアントの機能になります。
ファンクション
実際の処理。アプリケーションプログラムなどの実行機能。
この機能を担当するサーバをアプリケーションサーバといいます。
データ
ファンクションの実行に必要なデータの保管機能。
この機能を担当するサーバをファイルサーバ、データベースサーバといいます。

この3つの機能を論理的に分離した形態を3層構造といいます。
 CSSでは,プレゼンテーションはクライアントの機能ですが,ファンクションやデータは,クライアントでもサーバでも機能を持つことがあり,その境界はあいまいでした。いうなれば,2層構造でした。
それを3層化することにより,サーバ構成の変更が容易にできること,クライアントにはブラウザだけがあればよいことなど,多くの利点があり,大規模なシステムでは,これを採用する傾向があります。

(最近では、Webサービスで、M(モデル)、V(ビュー)、C(コントローラ)のMVC3層構造が注目されていますが、ここでの3層構造とは異なります。)

3層構造の利点の具体例

単純にいえば、アプリケーションサーバはプログラムが入っているサーバ、データベースサーバはデータが入っているサーバです。2層構造では、これらの区別があいまいであるのに対して、3層構造では明確に区分しています。
 また、アプリケーションサーバのなかには、クライアントからの要求を解析して、どのアプリケーションサーバに置かれているどのプログラムを呼び出すかを判断する機能(ブローカー機能)をもっていることもあります。

3層構造の利点を、データベースを用いるWebページ閲覧を例にして説明します。
 まずクライアントからWebサーバへ要求が出されます。Webサーバはそれを解析して、CGIを用いてWebアプリケーションサーバにあるプログラムを呼び出します。そのプログラムは、必要に応じてデータベースサーバから該当するデータを取り出して、求める処理を行い、その結果をWebサーバに戻します。Webサーバは、その結果をHTML(Webページ用のテキスト)に変換して、クライアントへ送ります。そして、クライアントはブラウザで画面に表示します。
 このようにWebサーバ以外にWebアプリケーションサーバやデータベースサーバを置くことにより、システムの変更,増強が容易になります。また、アクセス量が増大したときには、Webアプリケーションサーバやデータベースサーバを増強して、負荷配分すればよいので、スケーラビリティを高くすることができます。
 しかし、多くの場合はこれらのサーバはハードウェアの分散になります。そのため、サーバ間でのデータ転送量が多くなる欠点があります。


サーバ

サーバには、その用途により多様なものがあります。プリンタを共同利用するプリンタサーバ、Webページを保管して提供するWebサーバ、電子メールのためのメールサーバなどがありますし、販売システムや会計システムなどの業務を行う多様な業務サーバがあります。

プリントサーバ

1台のプリンタを、LANで接続されている数台のパソコン(クライアント)で共有するとき、そのプリンタを制御するサーバをプリントサーバといいます。
 パソコンからのプリント要求があると、プリントすべきデータはプリントサーバに転送され、その要求はいったん待ち状態におかれます。そして、プリンタの稼働状況により逐次出力されます。そのため、パソコン側はプリント要求を行った後は通信を切断することができます。
 プリントサーバを用いるためには、サーバ側に共有資源設定をしておく必要があります。また、TCP/IP環境のLANならば、プリントサーバにIPアドレスを設定をしておく必要があります。
 特定のパソコンに直結したプリンタも、そのパソコンをプリントサーバにすることにより共有できますが、そのパソコンをシャットダウンしたりLANから切断したりしている場合は、他のパソコンからの要求は受け付けられません。

サーバとは論理的概念

サーバとは、特定のハードウェアを指すのではなく、機能という論理的な概念であり、ソフトウェアにより実現されます。
 いくつかのサーバ機能を1台のパソコンに搭載していることもありますし、一つのサーバ機能のために数台のパソコンを用いることもあります。ファイルサーバやプリントサーバなど,機能ごとに別のコンピュータに分ける必要はありませんし、データが多数のコンピュータに分散しておかれていることもあります。
 いいかえれば、サーバは,必要に応じて処理の一部を更に別のサーバに要求するためのクライアント機能をもつことがあるともいえます。

サーバ環境の発展

サーバーベース方式(標準機能提供方式)

所期の環境です。WindowsなどのOSのマルチユーザ機能を利用したもので、1台ののサーバに複数ユーザがリモートログインし、共有して利用します。
 シンクライアントにより、業務の大部分をWebブラウザで処理するようになると、そのサーバがWebサーバやその背後にあるデータベースサーバなどに変化しましたが、標準的な機能をもつサーバを多数の端末で共同利用するという意味で同じだといえます。

ブレードPC方式(個別機能提供方式)

大規模サーバは多数のパソコンを結合した構成になっていますが、1枚のブレードにパソコン機能を備えたものを数多く搭載できるブレード方式が出現しました。低価格で追加が簡単にできます。
 個々のクライアントごとに1ブレードを割り当てることにより、利用者は自分専用のサーバがある(これまで自分が使っていたパソコン機能がそのままサーバに移行しただけ)ように感じられます。

VDI(Virtual Desktop Infrastructure:デスクトップ仮想化)

クライアントのデスクトップ環境をサーバ上で稼働させる仕組みです。これにより、クライアント環境を別のパソコンやタブレット端末でも行える利便性の高さが注目され、急速に普及しています。代表的なVDIソフトウェアに、VMware Horizon(with View)やMicrosoft VDIなどがあります。
 この環境でのサーバを仮想サーバといいます。これに関しては「仮想サーバ」で扱います。


クライアントの種類

クライアントには通常のパソコンを用いるのが一般的です。
 ところが,3層構造やイントラネットを進めれば,ファンクションやデータはすべてサーバに置き,サーバで処理をした結果の画面をクライアントで表示するだけで業務が行えます。それで、クライアントにはプレゼンテーション機能としての画面表示機能だけを置けばよいことになります。このようなクライアントをシン(thin:痩せたの意味)クライアントといいます。最近ではセキュリティ対策を目的としたシンクライアントが重視されており,それに必要な機能を加えたものをセキュア(secure:安全な)クライアントといいます。
 しかし、あまりにもサーバに集中させるとサーバに負荷がかかりすぎます。クライアントとサーバの適切な負荷分散が必要になります。その協調を重視する方式をリッチクライアントといいます。

参照: 「クライアントの種類」